弐段逆噴射

全天候馬場(all weather)

全天候馬場・オールウェザーはその名の通り、天候に左右されない馬場のことである。
また、その使用素材から、人工馬場と呼ばれることもある。

略称は芝(Turf)の「T」、ダート(Dirt)の「D」に対して、「A」が使用されるが、All Weatherの「A」ではなく、
Artificial surface(人工素材)の「A」となっている。一部All Weatherの「AW」を使用する場合もある。

2014年4月現在、日本では調教コースのみに利用されており、競馬場への導入事例はまだない。
また、日本では調教コースのウッドチップを
そのままウッドチップやWoodchipsの「W」と表記し認識されているが、人工馬場の一つであるとも考えられる。

北米やUAEでは早くから導入が進んでおり、2007年にはカリフォルニア州競馬委員会が、
州内競馬場への導入を義務付けるなどし、導入が進んだ。
また、すでに米国内では、ダートへ回帰する動きも見られており、サンタアニタパークでは2010年にダートへ戻している。※後述1

ドバイでは、2010年にナドアルシバ競馬場から、その機能を引き継いだメイダン競馬場が開場し、
メイダンのメインコースに使用されている。

欧州では、芝が主体のため、導入は進んでいないが、一部シーズン開幕早々に使用される競馬場で導入されている。

オールウェザーの導入は、ダートコースに比べてのコースコンディションの維持の合理化と、
事故率や、脚への負担への軽減が主な理由である。
これは、襲歩で人工馬場を走破した場合に、脚への負荷が低いという調査結果に基づいたものである。

よって、殆どの競馬場では、オールウェザーを導入した際に、ダート馬場から変更しており、ダートとオールウェザーは、
近しいものであるという認識に陥りがちである。

しかし、ダートとは全く別のものである。※後述2
ダートの代替品と考えるのには少々無理がある。実際導入時の試走で絨毯の上を走っているようだと
質感を評した海外のジョッキーもいた。もちろん芝生でもないことは言うまでもない。

更に困ったことに、オールウェザーはその構成素材によっても
全く異質なものとなる。

現在北米で主流である
・ポリトラック/キーンランド、アーリントン、ウッドバインと、
(電線被覆材、珪砂などをワックスでコーティング)
ドバイで使われてる
・タペタ/メイダン
(砂、ゴム片、人工繊維などをワックスでコーティング)
でも差異がある。
一時期に比べ、ドバイWCで米国馬が活躍できなくなったこと。
遠征自体が減ったことも、ポリトラックとタペタの差異に要因があるように思われる。

更に更に困ったことに、オールウェザーは経年や低温で、ワックス等が硬化し、馬場が堅くなり、
高速馬場となることもある。

実に多種多様な構成素材があるオールウェザーであるが、主な構成素材は、砂、ワックス、人工繊維、エポキシ樹脂、
電線の被覆材、合成ゴムの破片、絨毯のくず、化学繊維など。

これらを各製造会社は配合割合を変えながら、独自の人工馬場を製造している。
上記のポリトラック、タペタに加え、
・エコトラック/デルマーやターフウェイパークで使用
がある。
他にも、あまり利用されていないが、

  • クッショントラック/ハリウッドパーク(廃止)、サンタアニタパーク(2008年まで)
  • プロライド/サンタアニタパーク(2010年にダートに戻す)
  • エクイトラック/現在はあまり使用されていない
  • ファイバーサンド/改良版が東京のダート路盤の一部に使用
  • スタロック/フランスやトルコの一部で使用
  • ビスコライド/ドーヴィル
  • サラトラック/オーストラリアの一部

などがある。
ではそのオールウェザーであるが、一体どのような特徴を持つのか。

コンディションの面から、その名の通り天候に左右されない一定した馬場となる。
ただし、降雪時に使用不能となる可能性もあり、
また、極度の大雨に対しては排水性の悪さが露呈している。
(※1)サンタアニタでは、この排水性の悪さからダートへ戻す結果になった。

全天候とはいえ、降雪や大雨に対応できない。
低温や経年で馬場状態が変化することから、ダートに比べて全天候型なのだろう。
このあたりが改善されていくのか、それともダートに回帰し、
淘汰されていくのかは興味深いところでもある。

馬の走行の面から、導入の背景に脚への負担軽減と書いたが、これは、馬場が均一化されており、跳上げ、凹凸が
少なく、滑りにくくグリップ力のある馬場であるという特徴。
総じて安定した走りができるという点から、負担が少ないという結論に至っている。これは
JRAの競走馬事故防止対策委員会の調査から判明している。

また安定した走りが可能なことから、ダートに比べ一完歩の時間が長く、
ダートでは一般的にピッチ走法が適していると言われているが、
オールウェザーでは芝と同様にストライド走法が適している。

このことより、上記には芝とは別物であるとしたが、グリップ力とストライド走法が適している面を考慮すると、
芝の適性と重複する部分もあるように考えられる。(※2)ダートに比べ、その特徴は真逆であると言える。
簡単、簡潔な言葉を用いれば、ダートよりも大分軽く、芝よりも少し重い馬場であると言える。

個人的なポリトラックとタペタの差についての見解は、ドバイと米国のG1を見た上で、
タペタの方が軽い馬場であると判断している。

日本の調教コースと北米、欧州、UAEの主要競馬場での全天候馬場一覧。
種類 使用競馬場
全天候馬場 ニューポリトラック 美浦TC(JRA)
小林TC(大井)
大井(変更計画あり)
アーリントンパーク(米)
キーンランド(米)
ウッドバイン(加)
リングフィールド(英)
エコトラック デルマー(米)
ターフウェイパーク(米)
タペタ メイダン(UAE)
ゴールデンゲートフィールズ(米)
プレスクアイルダウンズ